本記事では、デジタル遺産の詳細や扱われ方、整理の方法に加え、生前に行えるデジタル遺産の整理についてもご紹介していきます。

デジタル機器を所持するのが当たり前になってきている現代の日本。

「デジタル遺産がどういったものかよくわかっていない」という方も、

デジタル遺産の取り扱いについて詳しく知っておきましょう。

知っておきたいデジタル遺産|相続人がするべきことや今からできる整理方法

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デジタル遺産とは?

故人がデジタルの形式で保管していた財産のことを、デジタル遺産と呼びます。

総務省の調査によると、2020年のインターネット利用率(個人)は、8割以上。

この普及率から見ても、今後デジタル遺産の重要性はどんどん高まっていくと考えられます。

デジタル遺産について、詳しく知っておきましょう。

 

デジタル遺産の種類

デジタル遺産の主な種類は4種類とされています。

具体例を交えて見ていきましょう。

 

1.金融口座

・ネット銀行

・FX

・仮想通貨

 

2.ポイント

・デジタルポイントカード

・マイレージ

 

3.有料の会員サービス

・動画や音楽のサブスク

・月額利用料金がかかるアプリ・ゲーム

・オンラインサロン

 

4.その他

・通販サイト

・電子マネー

 

デジタル遺産の特徴・注意点

デジタル遺産では、目に見えないからこそのトラブルが起こり得るので注意が必要です。

デジタル形式で保存されていることからも分かるように、デジタル遺産はスマートフォンなどの端末内、ネット上に保管されている場合がほとんど。

亡くなった人のスマートフォンは解約してしまうかと思いますが、解約には注意が必要になります。

もしスマートフォンの解約後にデジタル遺産が見つかった場合、

ログインしようとしてもスマートフォンの電話番号やメールアドレスが必要になることがあるためです。

 

ログインできなかったものが無料のサービスであれば問題ありませんが、月額料金がかかる場合では退会の手続きができないために、

自動引き落とし先が有効な限りずっと会員料金を払い続けなければなりません。

また相続税申告後にネット銀行の口座が見つかって申告漏れになった、FX口座に気がつかず損害が出てしまったなどといった事例もあるため注意しましょう。

 

デジタル遺産はどう扱われている?

通常の遺産と同じく相続の対象となるデジタル遺産ですが、法整備はあまり進んでいないのが現状です。

ここからは、実際にデジタル遺産がどのように扱われているか、具体的に説明していきます。

 

ネット銀行

ネットのみで取引を行う銀行であっても、相続の手続きは通常の銀行と同様書面で行うことができます。

まず故人が利用していたネット銀行に問い合わせをし、手続きに必要な書類を送付してもらったら記入して返送するという流れです。

 

仮想通貨(暗号資産)

国税庁によると、仮想通貨の相続は以下のような流れになります。

 

1.仮想通貨を交換する業者に残高証明書の発行を依頼

2.発行された証明書の内容に同意する

3.代表相続人の口座に、故人が亡くなった日のレートが振り込まれる

4.税務署に納税を申告する

 

ただし取引があまり活発ではないマイナーな仮想通貨の場合には、どのような内容の仮想通貨か、

取引の実態はあるのかを鑑みて個別の評価を行うことになっているため、上記の流れどおりになるかは定かではありません。

マイナーな仮想通貨に関する法整備はまだ進んでおらず、今後の動きに注目が必要です。

 

マイレージポイント

マイレージポイントは、相続ができるとされています。

航空会社によっては、死亡後6ヶ月以内の申請が必要な場合もあるので、できるだけ早めに手続きをしておくとよいでしょう。

 

またマイレージ以外にも電子ポイントを貯めている場合も多くあると思います。

メジャーな電子ポイントは、使用していた人が亡くなった時点でサービスが終了したという扱いになり、

残高は相続できるものの、ポイントは相続の対象とならない場合も少なくありません。

 

また近年利用している方も多いであろうフリーマーケットやオークションアプリでも、退会した時点で保有していたポイントは消滅するとされるものもあります。

サービスごとに扱いは異なるうえ、対応が変化する場合もあるので、必ず最新の規約をチェックするようにしましょう。

 

故人のデジタル遺産、相続人はどう整理する?

相続人はどのようにデジタル遺産を整理すればよいのか、ポイントをまとめていきます。

 

使用していたスマートフォンなどのアプリを確認

故人が使用していたスマートフォンやタブレット、パソコンなどにインストールされているアプリを確認することでデジタル遺産を発見することができます。

これは、ネット銀行やサブスクを利用するためには、アプリのインストールが必要な場合が多くあるためです。

デジタル遺産が見つかったらリストアップし、1つずつ手続きしていきましょう。

 

メールやブックマークしていたサイトを確認

アプリと併せてチェックしておきたいのが、よく使うサイトを登録しているブックマークや、取引に関する情報をやりとりしているメールです。

アプリは画面を見れば確認できますが、こちらはメールアプリの中や検索サービスの中まで見ないと確認できないため、忘れないようにしましょう。

 

メールやブックマークしていたサイトを確認し、取引があることが分かった場合には、

相続時、本人が亡くなったことを連絡すればデジタル遺産があるか問い合わせできます。

 

カードや銀行の口座明細を確認

クレジットカードや銀行の口座明細がある場合、これらを確認することでデジタル遺産の存在に気がつけるかもしれません。

取引や月額料金の払い込みはオンラインで行っていても、銀行などを経由していればデジタル遺産に関するやりとりが明細などに記載されている可能性があります。

例えば同じサービス名で毎月同額の引き落としがあれば、月額オンラインサービスを利用していたのかもしれないと気がつくことができるわけです。

 

クレジットカードや銀行口座を複数持っているという方も多くいます。

デジタル遺産に気がつかなかったときのトラブルを避けるため、

そして遺産整理を楽にするためにも所持しているクレジットカードや銀行口座を生前にリストアップしておくと安心です。

 

パスワードがわからない場合は専門の業者に依頼

アプリやブックマークされたサイトは見つけたものの、IDやパスワードが分からずにログインできない、

そもそもスマートフォンのロックが解除できず途方に暮れる場合もあると思います。

色々と調査をしてみても一向に解決の糸口が見えないという場合には、最終手段として専門業者への依頼を考えてみましょう。

専門業者に依頼すれば、デジタル機器の内部に残されたデータの取り出しや、アカウントの解除が可能です。

ただし費用が10万円程度 と高額なケースも多いため、業者選びは慎重にする必要があります。

 

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故人のアカウントへのアクセス・消去方法

サービスの中には、故人のアカウントへのアクセス方法を示しているサービスもあります。

利用している方も多いであろう2つのサービスを取り上げて、具体的にアカウントへのアクセス方法や消去方法について見ていきましょう。

 

AppleID

iPhoneやiPad、MacBookといったApple社の製品を使っている方が登録するApple ID。

こちらのサービスでは、死後に故人のアカウント内のダウンロードしたアプリなどのデータにアクセスできる人物を生前のうちに設定することができます。

ただし、Apple IDで購入したサブスクリプションなど一部の情報にはアクセスできないため、注意してください。

 

データにアクセスするには、管理先を設定したときに生成されるアクセスキーと故人の死亡証明書が必要になります。

またアカウントを完全に削除したいという場合には、ご自身と削除を希望する故人のApple IDと法的書類を用意し、申請することが可能です。

 

Googleアカウント

AndroidのスマートフォンやGmailなどの利用に必要となるGoogleアカウント。

こちらのサービスでは誰が故人の情報にアクセスできるか、

さらにアカウントの削除を希望するかを生前のうちに設定できるアカウント無効化管理ツールが用意されています。

引き継ぐデータの内容や、アカウントにアクセスが無かったらアカウントを削除する期間も好みで設定できるので

Googleアカウントを使用しているのであれば事前に手続きしておくとよいでしょう。

 

またアカウントの管理について知らせないまま亡くなってしまった場合にも、家族や代理人と連絡を取り、

慎重な審査のうえで適切だと判断されると故人のアカウントを閉鎖することが可能です

ただ閉鎖するだけでなく、故人のアカウントからコンテンツの提供ができる場合もあります。

 

相続人に負担をかけないためには?今からできる整理方法

相続人となる遺族にトラブルなどの負担をかけないためには、生前からデジタル遺産の整理について考えておかなければなりません。

ここからは、今すぐにできるデジタル遺産の整理方法についてまとめていきます。

 

デジタル遺産の内容をリストアップする

スマートフォンやパソコンでどのようなデジタル遺産を利用しているか、すべてリストアップして書き出しておくことが大切です。

利用しているものがすべてまとめてあれば、相続人もスムーズに手続きができるでしょう。

できるだけ見られたくない内容のものがある場合、信頼できる友人や親族に対応してもらえるよう書き残しておくなど、ご自身が納得できる方法をとっておきましょう。

 

口座番号やパスワードはデジタルデータで管理

口座番号やパスワードは、デジタルデータでの管理がよいでしょう。

手書きで残しておくのも1つの手ですが、遺族が読み間違える、そもそも書き間違えているといった可能性があるためおすすめしません。

口座番号やID・パスワードは、故人が利用していたデジタル遺産の手続きを遺族が行う場合に必ず必要になります。

 

デジタル遺産に関するサービスはブックマークの最も上に保管するなど、遺族が探しやすいよう工夫しておくとよりよいでしょう。

ただしスマートフォンやパソコンが開けないことにはデジタルデータの確認自体ができないため、

そういったデジタル機器のIDやパスワードは、書き残しておいてください。

 

不要な月額オンラインサービスを解約

まずはご自身が契約している月額オンラインサービスにはどのようなものがあるかを整理したうえで、

本当に必要なものかどうかこまめに確認して、不要だと感じたときには解約しましょう。

 

さまざまな月額オンラインサービスがある現代、「解約し忘れて、まったく使っていないのに月額料金を支払い続けていた」

といったような事例が起きることも少なくありません。

月額オンラインサービスの精査が完了したら、契約しているものをリストアップしておくことも大切です。

 

資産額を近しい人に伝えておく

デジタル遺産を合わせるとどれくらいの金額になるのかを把握しておき、信頼できる親族などに伝えておくことも事前にしておきたい整理方法です。

ある程度の資産額がわかっていれば遺産の整理も楽になりますし、金額が合わなければ何か見落としがあるかもと気が付くことができます。

 

生前に伝えておくことができなかった場合に備え、口頭だけでなく書き残しておくとより安心です。

 

遺言を残す

デジタル遺産を誰に相続したいかといった内容の遺言を残しておけば、デジタル遺産を相続するときの判断基準となります。

また消去して欲しいデータや退会して欲しいサービスなども遺言として残せますが、法的な義務は生じないので注意してください。

データ消去やサービス退会をすることを負担として、財産を遺贈することもできます。

もしこの形で遺贈を行うのであれば、生前にあらかじめ頼んでおく必要があります。

 

死後事務委任契約を依頼する

デジタル遺産やさまざまなインターネット関係のサービスに詳しい第三者に処理を任せる、死後委任契約を依頼するのもデジタル遺産を整理する方法の1つです。

 

「相続人の中にデジタルやネット関係に詳しい人がおらず、管理を任せたとしてもどうしていいかわからないのではないか」

と不安な方にぴったりなのではないでしょうか?

主に司法書士などの法律専門家に死後事務委任契約をすることができます。

もし依頼する場合には、死亡したときに業者に連絡がいくようにしておいてください。

 

デジタル遺産に関する本を読んでおく

デジタル遺産に関する本などを読んで知識をもっておくと、いざデジタル遺産の整理をしようと思ったときに動きやすいでしょう。

法律に焦点を当てたものやトラブルをさけることを目的としたものなど、本によって内容はさまざまあります。

ご自身が知りたい内容がまとまっている本を選んで読むようにしましょう。

 

デジタル遺品とどう違う?

デジタル遺産とよく似た言葉として、デジタル遺品があります。

デジタル遺品とは、直接的にお金に関わらないネット上の遺産のこと。

以下に挙げるような内容がデジタル遺品となります。

 

・メール

・SNSなどのアカウント

・デジタルデータ(写真・動画・文章・音楽など)

・知的財産(機密情報・創作物・取得したドメインなど)

 

これらはスマートフォンやパソコンなどに保存されているものと、ネット上に保存されているものにわかれます。

保存されている場所がバラバラなので、使用している本人もどこに何が保存されているか把握していないことも多く、死後整理に手間取る場合が多いようです

またデータ保管が有料となっており、料金を払い続けていたというケースも。そういった事態を防ぐためにも、

デジタル遺産と同様にデジタル遺品も生前の整理が大切です。

 

まとめ

本記事を通じて、デジタル遺産がいかに身近なものかご理解いただけたのではないでしょうか?

故人の死後に対応する方法を知っておくことも安心材料にはなりますが、身近なものであるからこそ生前にできる整理をきっちりと行っておくことが大切です。

これからより重要なものとなっていくであろうデジタル遺産について、本記事の内容に加えて最新の情報にも目を光らせておきましょう。

【監修者:一般財団法人遺品整理士認定協会】

遺品整理業界の健全化を目的に2011年設立。

遺品整理士養成講座を運営し、認定試験・セミナー・現場研修などを実施している。

法令順守をしている30,000名を超える会員、1,000社を超える法人会員が加盟。法規制を守り、遺品整理業務を真摯に行っている企業の優良認定、消費者保護のための遺品整理サービスガイドラインの制定もおこなっている。

 

【執筆者:みんなの遺品整理事務局】

東証プライム市場上場の株式会社LIFULLのグループ会社である株式会社LIFULL senior(ライフルシニア)が運営しています。2017年より業界最大級の遺品整理・実家の片付け業者の比較サイト「みんなの遺品整理」を運営し、全国で累計件数30,000人以上の皆様からご相談・ご依頼をいただいております。

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